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かごめかごめ


揺れる車の中、俺はふてくされた顔で、外の景色を眺めていた。
その景色は、自分がいた都会の風景とは大違いで、木や草だらけの景色だった。
「ほら、いつまでもふてくされてないの。」
そんな俺を見かねたのか、母親が苦笑気味に声をかけてくる。
「従兄の遠樹君もいるんだから。」
「それとこれとは別だろ!急に引っ越しなんて・・・しかも、こんな田舎!!」
そう、俺は旅行のために、こんな田舎に来ているのではない。
引っ越しのために来たのだ。
父親が急に転勤することになったのだ。
あまりの唐突さに、家族全員で大わらわ。
俺は引っ越しするのは嫌だったが、俺は家事ができないので、一人暮らしは無理だし、居候させてくれるような親戚も近くにはいなかった。
「・・・あいつらと、別れたくなかったのに・・・。」
いつか別れる事になるとは分かっていても、親しい友人とこんなにも早く別れるとは思わなかった。
「・・・ごめんな。」
ポツリと運転席の父親が呟いた。
その一言に、俺は自分の我がままが恥ずかしく思い、そっぽを向く。
「・・・別に、電車で一時間かかるけど、元の町にいけなくないから、いい。」
そして、こう早口に言う。
「すまない。」
父親の言葉が、謝ってはいるが、軽いものとなった。
「父さん、加古目村ってどんなとこ?」
いつまでもネガティブではいられないと思い、話を変えてみた。
「意外に、コンビニがあるぞ。」
「マジで?」
こんな田舎に?
「古い物と新しい物が入り混じる不思議な村だ。」
その言葉とともに、父が前方を指さす。
山と山の間にある村だった。
そして、コンビニやスーパーが見えるのに、古い商店街も見えた。
車は村の全景をとらえつつ、坂を下り、村へと近づいて行った。


村の入り口には一人の少年の姿。
「勇!久しぶりだな!」
従兄の遠樹だった。
遠樹はスラッとしており、クールな印象を受ける顔だちをしている。
しかし、実際はよく笑い、太陽の様に明るい性格だ。
勉強もでき、運動もそこそこできて、テニス部の部長を務める、という人だが、性格が我がままで、腹黒ドSという惜しい人だ。
「元気にしてたか?これからは、毎日会えるな!」
遠樹は俺の頭を優しく撫でる。
しかし、彼は自分と付き合うに値する者だと認識したら、とことん優しくするのだ。
「勇、よかったら、遠樹君に村を案内してもらいなさい。」
母親の言葉を聞き、俺は遠樹を見上げる。
「よっしゃ!行くか!」
遠樹は俺の手を握り、何も聞かずに走り出す。
「ちょっ、待って!速い!」
案内をしてもらうのに異論がない俺は一緒に走り出すが、唐突過ぎて、こけそうになってしまった。
それを遠樹はさりげなく支え、俺が態勢を戻すと、何事もなかったように走り出す。
「まずは、俺の仲間のとこに案内するな。」
そう言って、遠樹が向かったのは、公演だった。


「きゃ~♪遠樹先輩が恋人連れてきたー!」
「マジかよ、おい・・・。」
「え?お友達じゃないの?」
公演に現れた俺たちを見て、3人の少年少女が声を上げる。
「腐女子発言をしたヤツ。パーマで髪がない女の子な。あいつは舞。」
3人の発言は思いっきり無視して、遠樹は紹介を始めた。
「よろしく、塔野 舞です。」
舞が手を振る。
「もう一人の女の子が、未来。」
「未来だよ、よろしく。」
未来は軽く一礼をした。
「で、最後が快。」
「快だ。よろしく頼む。」
快は軽く手を上げただけだった。
「こいつは俺の従兄、勇。今日、こっちに引っ越してきたんだ。」
「勇です。よろしくお願いします。」
俺は少し緊張した声で言い、一礼をした。
「勇君は受け?」
舞の唐突な質問。
「・・・・・・・・・・・・。」
「答えなくていい。」
どう答えていいのか分からず、遠樹を見上げれば、そう返ってきた。
「む~、遠樹先輩、ノリ悪い~。しっかり勇君と手、握ってるくせに~。」
つまらな~い、と舞は頬をふくらます。
確かに、公園についた今も、俺は遠樹と手を繋いだままだった。
「従兄で手を繋いじゃ悪いかよ~。お前たちとだって繋ぐだろ~。」
クールな顔立ちが可愛く唇を尖らせた。
幼いその仕草がなぜか変に遠樹には似合っていた。
クールで可愛い、それが遠樹である。
「・・・お前が手を繋ぐのは、性質の悪い独占欲だろうが。おかげで、俺は恋人もできん。」
快がため息をつく。
「できなくていいよ。」
即答した遠樹の言葉に、快はもう一度ため息をついた。
「快の事を、俺っていう障害があるぐらいで諦める女なんか、快の恋人になる資格はなくない?」
「・・・・・恥ずかしい奴。」
しかし、次に遠樹の口から出た言葉に、快は思わず赤面をしていた。
「いや~ん、遠快ね!」
「「うるさい。」」
舞の腐女子発言、即座に黙らす少年2人、それを楽しそうに眺める未来。
勇は見ていて、この4人はとても仲がいいのだという事が分かった。
この4人の仲間に、自分はなれるのだろうか?
「勇君。」
考え込んでいた勇を未来が呼んだ。
「これから、5人で遊べるんだね。もっと楽しい事ができそうだね。」
「・・・・・うん!」
勇は元気よく頷いた。

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