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「・・・不幸だ。」
当麻がポツリと呟く。
「巻き込まれている僕の方が不幸だ。」
それにステイルはムッときて、言い返す。
「本当にすみません・・・。」
当麻は素直に自分が悪いと思ったのだろう、すぐさま謝ってきた。
「なんで君は不良たちに追われるような立場になってるんだい?」
ステイルは隠れたままチラリと路地の向こうへと視線をやる。
いかにも不良という少年たちが怒鳴り散らしながら、何かを探していた。
その何かというのは、ステイルと当麻なのだ。
「それには深ーい訳がありまして・・・。」
「うん。」
ため息と共に言われた言葉にステイルは相槌を打つ。
「とある少女を助けるために学園都市最強の男をぶっ飛ばしたわけですよ。」
「その少女はインデックスかい?」
「・・・違います。」
「僕も君をぶっ飛ばしていいかい?」
「止めてください。」
当麻はこの狭い路地で器用に90度腰を曲げた。
ステイルはため息をつくと、理解した事柄を正しいか確かめるために声に出す。
「それで、今は弱そうな君が学園都市最強になってしまっていて、弱そうな君だから不良は倒せるんじゃないかと思って、弱そうな君を見かけては追いかけてるんだな。」
「そう何回も弱そうって言われると、実際にそうな上条さんでも、マジへこみしそうなんですがー。」
「まぁ、弱そうなだけで、実際の君は強いけどね。」
「へ?」
当麻が目を大きく見開く。
「でなきゃ僕がインデックスを君に預けたりしないよ。その代わり、今後誰かに負けてインデックスを傷つけるような事態に陥ったら、君を速効消し炭にしてやる。」
「い、イエッサー。」
おおう、大きなプレッシャーが・・・!と呟きながらも、当麻は頷いた。
「さて、どうするんだい?ここは人払いのルーンのおかげで見つからないだろうが―――。」

「見つけた。」

ステイルの言葉を舌足らずな声が遮った。
「不思議、だね。この路地に誰も近づこうとしない。人々が無意識に忌避するような音波のようなモノが流れてるのかな?それとも、視覚的にここはない物として人々には映ってるのかな?まぁ、でも五感に頼らない私には効かないみたい。」
クスクスと笑い声がステイル達がいる路地の入口から反対、つまり路地の奥から近づいてきた。
声の主はインデックスと同じ年ごろの少女だった。
彼女自身が言った通り、五感に頼っていないという証拠の様に彼女は眼を瞑っていた。
少女はゆっくりと近づいてくる。
ステイルの頬に汗が流れた。
ふと疑問に思い、ステイルは汗を拭った。
別にステイルは、この少女を恐れたわけではない。
炎剣を使えば、こんな少女など倒すなり、この場から逃げるなり簡単にできるだろう。
冷や汗などかくわけがない。
では、この汗はの意味は?
この場の温度が急激に上がっているのだ。
「まずいぞ、ステイル。走れ!」
当麻が叫び、路地から飛び出した。
それ追い、ステイルも路地から出る。
途端、冷えた空気が一気に汗をかいた肌を冷やす。
「いったいどういう事だ!」
ステイルは走りながら怒鳴る。
「赤外線だ!あいつは五感の代わりに赤外線を使って、周囲を認識しているんだ。」
「赤外線?」
急に出てきた単語にステイルは戸惑い、聞き返す。
「ステイルでも、赤外線は知ってるだろ?可視光線の中で赤色の光よりも波長が長い光だ。」
「ああ、それぐらいは分かるが・・・。」
「でもって、監視カメラとかでよく使われているだろ?赤外線って。」
「そういえば・・・だけど、どうして分かったんだ?」
「電子レンジにも使われてるだろ。」
「だから、周囲の温度が・・・!」
当麻といえども、さすがは学園都市の人間だ。
科学知識には敏い。
「ここまで、走れば、大丈夫だろ。」
いくつかの道を曲がり、小さな路地に入り、また大通りに出て走り、路地から出たことで見つかってしまった不良もまけた頃に2人は止まった。
2人は息を弾ませながら、周囲を警戒する。
商店街の待ち合わせにも使われそうな広場だった。
ちょっとした戦闘ならできそうなぐらいに広い。
そして、2人以外に、人は誰もいなかった。
「・・・今度は僕の方が巻き込んだみたいだね。」
やれやれと、ステイルは懐からルーンを取りだす。
「・・・不幸だ。」
当麻がポツリと呟いた。
「同感だ。」
今度はステイルも頷いた。

奇妙な剣を持った男がステイル達に近づいてきた。

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