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暗闇でも見える君 ③

寮に帰ると、なぜか扉に鍵がかかっていた。
ステイルがドアノブをガチャガチャと回す音がするが、開く音が聞こえなかった。
「インデックスはいないのかい?」
ステイルの問い掛けに、当麻は首を傾げるしかなかった。
とりあえず、鍵をポケットから取り出し、ステイルに渡す。
ガチャリと鍵が開く音がして、扉が開く。
「靴はここで、段差があるから気を付けるんだ。」
ステイルの言葉に、当麻は靴を脱ぎ、確かこの高さだったはずと、経験を頼りに玄関の段差を登った。
パチリと照明を点ける音がした。
どうやら、本当にインデックスはいないようだ。
「・・・書置きがあるよ。」
カサッとステイルが何か、紙を持ちあげる。
「土御門舞夏って子からだね。飢えていたインデックスちゃんは、土御門宅で夕飯の後、寝てしまいました。だそうだ。」
ステイルが、インデックスちゃん、と言うが可笑しくて、笑うのを耐える事がちょっと苦しかった。
「そ、そうか。だったら、都合がいいや。こんな目、あいつに見せたら心配するだろうし。」
当麻は自分の目に手をやった。
手は、医者に盲目って分かりやすいようにと巻かれた包帯に触れた。
「でも、明日にはバレルだろうけどね。」
「・・・だな。」
当麻は頷き、明日の事で気を重くした。
絶対に騒ぎ、インデックスを巻き込まなかった事に怒られるのだろう。
「土御門にメールで説明して、上手く帰らせないようにするか・・・。」
それが一番だろう。
「じゃあ、僕の方から送っておくよ。」
ステイルは携帯を開き、何やら操作し始める。
操作しながら、ステイルは当麻の手を引く。
座れと言う意味だろうととり、当麻は床へ座った。
その時、ステイルの手は離れてしまった。
当麻は残念に思いながら、手を前にやると、何かにぶつかった。
手触りからして、ちゃぶ台だ。
「あぁ、残念ながら、僕は和風の料理は作れないから、洋風で我慢してくれ。」
ステイルの声が遠くで聞こえた。
「おう。」
どうやら、ステイルの手料理が食べられるらしい。
お土産に手作りのスコーンを貰った事はあったが、おかずは初めてだ。
人の手料理と言うものは、誰のものでも、なんだか楽しみだ。

トントントン・・・

包丁で、何かを切る音が聞こえてきた。
(あ、やる事がない・・・。)
暇な時間は漫画を読むか、ゲームをやるかだったが、目が見えないのでは出来ない。
テレビを点けよう、と思ったが、リモコンがどこにあるか、分からなかった。
仕方なく、机に突っ伏し、ステイルが料理している音を聞く。
野菜を切って・・・
フライパンで炒めて・・・
煮込んで・・・
何を作っているのだろうか・・・。
「上条当麻?」
ステイルの声で、目が覚めた。
どうやら、いつの間にか寝てしまっていたようだ。
「あ・・・わりぃ・・・。」
当麻は上半身を起こしながら、目をこすろうとして、包帯がある事を思い出した。
しかし、すぐに、その包帯は外された。
「家では必要ないからね。」
どうやら、ステイルが取ってくれたようだ。
「サンキュ。」
「ああ・・・とりあえず、夕飯ができたよ。」
言われて、良い匂いが漂っている事に気づく。
「・・・ビーフシチュー?」
「正解。」
当麻の言葉に、ステイルは小さく笑った。
「すっげー美味そうな匂い!」
この前当麻が自分で作ったビーフシチューよりも美味しそうだ。
カチャ、と食器の音が聞こえ、フー、と息を吹きかける音が聞こえた。
「はい、口を開けて。」
何でしょうか、この状況は。
明らかにステイルは、シチューの入ったスプーンをこちらに差し出している。
まるで、恋人のように。
「・・・・・・・・あ、あーん。」
当麻は戸惑いながらも、口を開けた。
すると、トロリとした暖かいモノが口の中へと入れられる。
ビーフシチューの味が口全体に広がり、噛むと、ニンジンの甘さが舌を刺激した。
飲み込み、当麻は声を上げた。
「うまい!!」
「それは何よりだよ。」
ステイルの反応は素気ないが、当麻は気にしなかった。
「あーん。」
おかわりを強請るために、当麻は口を開ける。
今度はジャガイモが口の中へと入って来た。
ほくほくした食感がシチューと絡まり、なんとも言えない美味しさが広がる。
次に入って来た牛肉は、噛めば噛むほど、美味しさがにじみ出てくる。
付け合わせのサラダも、ステイルオリジナルのドレッシングが美味しかった。
そして、完食。
「美味かった・・・。」
食器が片付けられた机に突っ伏し、当麻は幸せに浸っていた。
「別に、普通の味だと思うんだが・・・。」
ステイルの呆れた声がキッチンの方から聞こえてくる。
水が流れている音が聞こえるので、食器を洗っているのだろう。
「イギリス人はいつも、こんな美味しい物を食べているのか!?」
「むしろ、僕は、君がいつもどんなものを食べているのかが、気になるんだが・・・。」
「・・・・・・・・。」
ステイルの言葉に、当麻は何も返せず押し黙る。
1人暮らしだから仕方なく自分で料理はするが、正直、まぁ、美味しいかな?程度の腕である。
得意料理は、自身がある。
素麺の茹で上がり加減には、うるさいのが当麻だ。
「ただ、ルーの裏に書いてある手順どおりに作っただけだよ。」
「・・・面倒で、炒める工程を飛ばすからな・・・。」
違いはそこかと、当麻は納得した。
いつもインデックスがお腹すいたと急かすので、時間短縮のため、いくつかの手間を抜いてしまうのだ。
「炒めないと、牛肉と玉葱のコクが出ないと思うんだが・・・。」
「・・・以後気をつけます。」
当麻はステイルの方を向いて言った。
食器洗いが終わったようで、ステイルの声が近くから聞こえていた。
「・・・ついてるよ。」
呆れら声に、当麻はキョトンとする。
すると、不意に口にティッシュの様なモノが当てられ、拭かれる。
「君は子供かい?」
ステイルが笑った。
声で笑ったのが分かったが、その頬笑みを見たかった。
「・・・年下のお前に言われたくねー!」
当麻は思わず怒鳴る。
「だったら、少しは年上っぽくしてみるんだね。」
しかし、さらりとかわされてしまった。
「・・・・・・・。」
反論できずに押し黙ったしまう自分は、やはり、まだまだ子供なのだろう。
だけど、これが普通のはずなのだ。
ステイルだって、もっと子供でいていいはずなのだ。
「お風呂、入れてくるよ。」
そう言って立ち上がるステイルは、やっぱり、自分よりも年上の様で、少しだけ悲しくなった。

 

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