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暗闇でも見える君 ④


ステイルと風呂に入るという事に少しだけ緊張したが、別に何事もなかった。
自分の体は目が見えなくても洗えるのだ。
シャンプーや石鹸の位置さえ分かれば、後は長年の経験で分かる。
狭い湯船なので2人で入る事ができず、交互に入った。
出た後も、体は自分で拭けたし、服も着れた。
「・・・意外に目が見えなくても、やっていけるもんだなー。」
風呂上がりのぼんやりとした時間。
当麻はそう呟き、音だけでテレビを見ていた。
「体は意外に日々の生活を覚えているモノだしね。」
ステイルがそう言いながら、冷たい麦茶の入ったコップを手渡してくれた。
食べ物は1人では難しかったが、飲み物は簡単だ。
しかし、一度机の上に置くのは面倒なので、ずっと手に持っておく。
「・・・なぁ、ステイル。」
見えないはずのコップを見るように俯きながら、呟く。
「ん?なんだい?」
「お前って、良い奴だよな。」
明るく言ったつもりだが、少し言葉が震えてしまった。
「・・・は?突然なんだい?」
しかし、ステイルはその声の震えには気づかなかったようで、ただ怪訝そうに返してきた。
「だって、お前、俺のこと嫌いだろ?なのに、責任ってだけで、こんなにいろいろ面倒見てくれて・・・ありがとな。」
嫌い、その自分で言った言葉に、なぜか胸がズキンと痛んだ。
一緒に闘ってきた。
だけど、仲良くなれていない。
自分は、ステイルと仲良くしたいのに。
「・・・そうだね、嫌いだよ。」
ステイルの返答は、想像していた通りなのに、少しだけ泣きたくなった。
不意に、クシャッという音が聞こえ、ステイルが立ちあがった。
「僕はもう寝るよ。君は?」
「あ、うん、寝る・・・。」
当麻がそう答えると、ステイルは問答無用で当麻を引っ張り、コップを回収して、ベッドへと押しこんできた。
そして、ステイルはというと、自分が寝るために布団をテキパキと引き始める。
「おやすみ。」
そして、電気が消されて、ステイルは寝てしまった。
どうやら怒らせてしまったようだ。
「・・・おやすみ。」
怒っても言ってくれた言葉に、当麻は小さく返し、自分もベッドに横たわる。
(難しいなー。)
どうやったら、ステイルと仲良くなれるのだろうか。
(仲良くしたいって、もう一度言ってみようか?)
オルソラの事件の時、一度だけ言った気がする。
だけど、あの時は軽く流されてしまった。
(でも、助けてくれたんだよな・・・。)
ピンチの俺を助けてくれた、ステイル。
(カッコよかったなー。)
まるで、ヒーローみたいだった。
思い出して、思わず顔をにやけさせる。
(俺を、助けてくれたヒーロー。)
その彼が、今、自分の傍にいる。
(今度は、俺が、ステイルのヒーローになれたら、いいな・・・)


ふと、目が覚めてしまった。
瞼を開けると、暗闇が広がっていた。
今は夜で、目がまだ暗さに慣れていないんだと思った。
しかし、暗闇は暗闇のままで、目に何も映してくれなかった。
そこで気付く。
自分の目は見えなくなったのだと。
(・・・ステイル・・・。)
その事実に気付いて、なぜか最初に思い出したのは、彼の存在だった。
(ステイルは、まだ寝ているのか?)
確かめたいが、何も映さないこの目では無理だ。
だから、当麻は耳を澄ましてみた。
ステイルが、寝ているなら、寝息が聞こえるはずだから。
しかし、いくら耳を澄ました所で、物音一つ、聞こえなかった。
「ステ、イル・・・?」
途端に、恐怖が湧きあがって来た。
暗闇の中に一人ぼっち。
どんなに、目の前が闇に閉ざされようと、当麻は平気だった。
なぜなら、ステイルがいたから。
ステイルが話しかけてくれて、手を握ってくれたから。
傍にいてくれたから。
好きな彼がいたから。
しかし、彼がいない。
当麻は起き上がり、音を探る。
「ステイル?」
どこにいるんだ?
「上条当麻?」
カラッとベランダの窓を開ける音と、ステイルの声。
「どうしたんだい?」
少し心配そうな声が近づいてくる。
「あ、いや、えーと。」
暗闇に1人が怖かったとは、照れくさくて言えない。
「起きたら、お前の気配がないから、どうしたのかなーって。」
誤魔化したが、嘘は言っていない。
「ああ、ベランダで煙草を吸っていただけだよ。」
カサカサと何かを振る音が聞こえた。
たぶん、それはステイルが愛用している煙草なのだろう。
「そっか・・・。」
思わず、安堵の声が出てしまった。
「なんだ、僕がいなくて寂しかったのかい?」
ステイルの挑発的な言葉に、当麻の頭に血が上る。
「なっ!暗闇に1人は怖いに決まってるだろ!」
言ってしまった。
自分の顔が熱くなるのが分かる。
また、からわれるのだろう。
君は子供か?とか言われるのだろう。
「・・・その気持ちは、分かる。」
しかし、ステイルの返答は意外なものだった。
「まぁ、僕の場合は、絶望と言う名の暗闇だったけどね。」
当麻はいつの間にかステイルを抱きしめていた。
「もう、お前は1人じゃない!もうインデックスは記憶を失くさないんだ。たとえお前の事をインデックスが敵だと思っていたとしても、誤解なんてすぐに解ける。その証拠に普通に話せてるだろ、お前達。昔の思い出は戻らないかもしれないけど、これからの想い出は作れるんだ。」
見えないから、不器用な抱き方になってしまったが、当麻はしっかりとステイルを抱きしめた。
「だから、だから、もう、お前の絶望は、幻想の様にぶっ殺していいんだ!」
「・・・ん。」
ステイルは当麻の肩口へと頭を置いてきた。
全身の力を当麻へと預けている。
「君は、本当に説教くさいね。」
「うるせー!だったら、説教したくなるような事言うな!」
せっかくステイルのためを思って、自分の言葉で、精一杯の励ましを言ったのに。
これは酷いんじゃないだろうか。
ステイルは、当麻の反応が面白かったのか、クスクスと笑っている。
「・・・なぁ、ステイル、俺も・・・。」
「ん?」
ステイルは笑うのを止めて、当麻の言葉を聞こうとしてくれた。
「俺も、お前との思い出、作っていいか?」
ステイルとの出会いの記憶は無くなってしまった。
その想い出はないけど、これからの想い出をステイルと作りたい。
「・・・考えてあげても良いよ。」
ステイルが小さく呟いた。
頬笑みを含んだ声で。
 

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