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夏に書きあげたかった・・・!

暗闇でも見える君⑤

朝起きたら、トントントン、と何かをまな板の上で切っている音がした。
目を開くと、目の前が真っ白だった。
「ステイル!白い!目の前が白い!」
当麻は嬉しくなり、叫ぶ。
途端、気付いた。
これは目が治る兆候だ。
後、少しで目は完全に視力を取り戻すだろう。
目が治ったら・・・。
「という事は、もうすぐ治るね。」
白い視界の中でも、ステイルの持つ鮮やかな赤は、うっすらと見えた。
「ようやく肩の荷が降りるよ。」
ふぅと息を吐く音。
当麻は今更、嘘をついたと言いたくなった。
ステイルを驚かせるための嘘だと。
本当は何も見えなくて、目の前は真っ暗なままだと。
しかし、当麻は思わず手を伸ばしていた。
1日、いや、半日ぐらいしか経っていないというのに、その色を見るのがとても久しぶりに思えて・・・。
ステイルの髪を掴んでいた。
「見えるのかい?」
嬉しそうなステイルの声に、嘘だなんて言えなかった。
「これ、ステイルの髪?」
分かりながらも、当麻はあえて訊いた。
「ああ。」
「赤は、見えるんだ。」
「赤?」
ステイルの不思議そうな声。
夕日の赤の様に、光の中で赤は人の目に届きやすいとか、理屈はたくさんあるけど、たぶん、今口にするべき答えは違う。
「お前の赤だから・・・。」
「それは違うだろ。」
一蹴された。
「もう朝食は出来てるから、早く起きたまえ。」
手から髪が離れていく。
それと同時に、ステイルの気配も傍から消えた。
(まだ、仲良くなれないんだな・・・。)
昨日の夜、少しだけ近付いたと思ったのに。
ステイルの反応の所為で気が抜けてしまうと、欠伸が出てきた。
「ふぁ・・・。」
大きく一つ欠伸をして、目を擦る。
すると、赤しか見えなかった視界が、うっすらと景色も見えてきた。
かろうじて色が分かるだけなので、まだ生活には苦労しそうだが。
たぶん、あそこがちゃぶ台だろうという場所に目を向け、当麻は立ち上がる。
そろり、そろり、と進んでいくと、何か踏んだ。
たぶん、雑誌。
そう判断した瞬間、ずるりと足が滑り、体が傾く。
「げっ!」
しかも受け身が難しい後ろへと身体は傾いていく。
このままでは、後頭部を打ちつけてしまう。
しかし、当麻は何もできずに、ただ来るだろう衝撃に備えて、固く目を瞑った。
「たくっ・・・君はどれだけドジなんだい?」
予想外の軽い衝撃が背中に当たり、そのまま熱に包まれる。
声に目を開けば、赤が目の前にあった。
「申し訳ありません・・・。」
本当は、ドジじゃなくて不幸なんですー、とか言ってやりたかったが、目の前同様、頭も真っ白で何も言えなかった。
あまりにもステイルがカッコよくて、心臓がドキドキして、平静を装うのに精一杯で・・・。
(なんでこう、あっさり助けられるんだよ!!)
当麻は起き上がり、慌ててステイルの身体から離れる。
「また転ぶよ。」
しかし、今度は手を握られる。
他意はないと分かっているのに、当麻の心臓は高鳴ってしまう。
そして、気付いた。
「・・・指輪・・・。」
ステイルが指輪をしていない事に。
「ああ、君が昨日痛そうにしていたから、とっくにはずしたよ。」
「そ、そっか。サンキュ。」
どうして分かったのだろうか。
そんなに態度に出していたわけでもないのに。
考えているうちに、当麻はちゃぶ台の前へと座らされていた。
「今日の朝食は、オムレツとサラダとスコーンだよ。」
「あ、朝でも、スコーンって食べるのか?」
「甘くないのをね。」
「へ~。」
会話によって、気を紛らわせようとするが、当麻は考えてしまう。
また食べさせてもらわなければ、食べられないメニューだと。
昨日はまだ、平気だった。
「はい。」
ステイルが差しだすモノを当麻はぎこちなく口の中に入れる。
「・・・美味しいです。」
「それはなによりだ。」
ステイルが当然と言う様に、しかし、少し嬉しそうに言った。
本当は、味なんて分からなかった。
心臓の音がうるさくて、頭は真っ白で、何も考えられなくて・・・。
いつの間にか食事は終わっていた。
当麻は片付けられたちゃぶ台の上に、顔を突っ伏した。
なぜだろうか、ステイルの言動一つ一つに心臓が高鳴る。
触られたところが、じんわりと暖かくて、まだ熱を持っているかのように錯覚する。
こんな経験は初めて、どうすればいいのか分からない。
当麻の短すぎる人生では、まったく分からない。
振動が鳴り過ぎて、痛い。
切なく、キュン、と痛い。
身体が、熱い。
だけど、とても幸せな暖かさだ。
(ん・・・?)
似たような症状をどこかで見た事がある気がする。
漫画やテレビで見たような・・・。
「上条当麻?」
ステイルの声に振動がドキンッと鳴った。
もう自分は重症なようだ。
彼に名前を呼ばれただけで、こんなにも心臓が煩くなるなんて。
もう、これはアレしかないじゃないか。
「どうしたんだい?」
ステイルの心配そうな声が、とても嬉しいなんて。
漫画でよくあるアレだ。
「な、なんでもない!」
当麻は慌てて起き上がり、首を横に振った。
「そうかい?」
「ああ!」
そんなわけがない。
男同士だ。
ありえるはずがない。
それに、ステイルはインデックスが好きで・・・。
ズキリと痛む胸に、確信するしかなかった。

上条当麻は、恋をしているのだ。
ステイル・マグヌスが好きなのだ。

(そっか・・・俺は、ステイルが好きなんだ・・・。)
叶わない恋だと分かっているのに、どうしようもなく、好きになってしまった。
(どうすれば、いいんだろうな・・・。)
 

 

 

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