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暗闇でも見える君⑦

帰り道。
もう、ステイルとは手を繋げなかった。
人混みの中、赤い髪の目印に歩く。
さっきまでは、とても幸せだったから、彼とはぐれてしまうという不幸が起きそうで、当麻は必死で歩く。
しかし、当麻は当麻で、不幸は直しようがない。
「うわ、ごめんな、さい!ぶっ!?」
「あらーん、大胆な子ねー。」
「ち、違います!本当にすみません!って、ステイルさん!どこにいらっしゃるのですかー!?」
胸の大きなお姉さんにぶつかっている間に、離れ離れになってしまった。
「ふ、不幸だ・・・。」
当麻はガクリと肩を下ろし、トボトボと歩く。
こんな人混みの中、誰か一人はするだろう。
ポイ捨て。
そして、そんな捨てられた缶は踏んだらとても危険だ。
踏む奴など、そうそういないだろう?
いや、ここにいる。
「へ?」
当麻の身体が後方へグラリと揺れる。
誰かがポイ捨てをした缶を踏んでしまったのだ。
「ヤバッ!」
こんな人混みの中で転んだら、さらなる不幸が待っているに決まっている。
しかし、当麻はどうする事も出来ずに、倒れる事しかできない。
朝もこんな事があったと、ふと思い出す。
その時は、ステイルが助けてくれた。
しかし、ここにはステイルはいない。
また、助けてくれたらいいのに。
そう思うとは、随分自分は我儘らしい。
(そんな事ありえな・・・。)
トンッ
背中に何かが当たった。
思わず瞑っていた目を開けると、そこにはステイルがいた。
「君は、目が見えても見なくても同じなんじゃないかい?」
「え・・・?」
信じられなかった。
目の前の光景がまったく信じられなかった。
なぜ、彼がいるのだろうか。
「ほら、行くよ。」
ステイルは呆けている当麻に構わずに、当麻の手を握った。
そして、黙々と歩きだす。
(なんで、本当に助けるんだよ・・・!)
当麻は俯き、引っ張られるままに歩く。
(そんな事されたら・・・。)
ステイルに握られていない方の手を当麻は、グッと握り込んだ。
(もっと好きに、もっと欲しくなるだろ!)
好きだと言うだけで満足できていたのに。
そんなカッコイイ所を見せられた、もっと好きになってしまう。
不幸な自分など、あそこで転んで、不良にぶつかって、追いかけられて、ボロボロになって、家に帰って、ステイルに呆れられるぐらいでいいのだ。
助けないでほしかった。
「・・・上条当麻。」
不意にステイルが呟き、立ち止まった。
そこは、もう寮の前だった。
学生達はまだどこかで遊んでいるようで、当麻達以外に人気はなかった。
「・・・君には、インデックスも、神裂も、オルソラも・・・たくさんいるだろう?」
ステイルが浮かべていたのは、悲しげな顔。
なぜ、そんな顔をするのだろうか。
「いいかい?僕が君に優しくしたのは、君の目が見えなくなった責任の一端が僕にあるからだ。それだけだ。だから、今回の好意で何かを勘違いしているとしたら、」
「違う。」
当麻はステイルの言葉を遮り、強く言った。
ステイルが何を言いたいのか正直、良く分からないが、なぜか直感で違うと思った。
「何が違うっていうんだい?」
ステイルの口調に怒りが混じる。
「だったら、なんで!君が僕を好きになるっていうんだ!!」
当麻はその言葉に硬直した。
まさか、聞こえていた?
本当に小さく呟いたのに。
あんな大きな音が周りに響いていたのに。
・・・聞こえていた?
「君のまわりにはたくさんにいて、なのに、わざわざ男で、いろいろ君に酷い事をした僕を好きに・・・!」
「・・・なんでだろうな。」
当麻は困惑しながら呟く。
「・・・7月に出会って、で、この前、法の書の時に一緒に闘って・・・気が付いたら好きになってたんだよな。」
あはは、と当麻は照れくさそうに笑った。
「まぁ、お前の事が好きって気付いたのは今朝だけどな。でも、たぶん、好きになったのは・・・たぶんもっと前だろうだ。」
「・・・君はマゾか何かかい?僕は君を燃やそうとしたし、囮にしたし、蹴りもしたよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・たぶん、違う!と、思います。」
クスッとステイルが笑った。
その笑みがあまりにも綺麗で、当麻は思わずステイルの腕を引いて、身体が傾いたところで彼の首に手を回した。
「ステイル、好き。」
今度は彼に聞こえるようにハッキリと言った。
「誰よりも好きだ。」
言葉と共にキスを送る。
ステイルは驚いた、でも、嬉しそうな、そして、泣きそうな顔をした。
「僕は・・・本当は・・・嫌いな奴に優しくできるほど、寛大じゃない・・・。」
たぶんこれが、素直じゃないステイルの精一杯の告白なんだと思う。
「・・・わざと、食べさせなきゃいけない料理を作ったのは下心からだったり?」
ちょっとだけ意地悪く聞くと、ステイルの顔が面白いぐらいに赤くなった。
図星だったようでそっぽを向いて、拗ねてしまった。
「ステイル、俺も好きだよ。」
機嫌を直してもらおうと、好意は受け取ったと言外に込めて言う。
「・・・ん。」
ステイルは小さく頷いて、くれた。
「ステイル、大好きだぜ!」


季節外れの花火に負けないぐらい、君に伝えよう。



+あとがき+
ちょっと上ステスランプに陥ってました。
オリジナルと別の二次ばっか書いてました。
本当にすみません。
もう1月ですよ。夏に書いてたのに!夏のネタなのに!
最後は苦し紛れにいつ読んでも大丈夫なように、季節外れてって入れておけば大丈夫だよねってノリです。
本当に、放置期間が長くてすみませんでした!!

ニコニコでまさかの上ステ発言っていうタグがあってね、法の書でこんな見方が!?ってたぎったんだよ。
だから書けたんだ。
 

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